拡がる、白色度70運動
パネラー三橋規宏(日本経済新聞社論説委員)
中森秀樹(コクヨ株式会社東日本営業本部マーケティング部長)
野本隆司(富士ゼロックスオフィスサプライ株式会社環境・CS推進室長)
津島利亘(王子製紙株式会社日南工場長代理)
矢澤 守(日本製紙株式会社情報用紙営業本部情報機器用紙部長)
岡本久人(株式会社九州テクノリサーチエコエコ研究会顧問)
中島千雅(北九州市環境局総務部資源化推進課長)
田守 順(社団法人日本青年会議所副会頭)
半谷栄寿(オフィス町内会事務局代表)

※役職は当時のものを記載

 
マーケットにどう向き合うか
 
矢澤  白色度70運動には、大変な興味と感心がありますし、コストと環境という視点からもう一度見直す必要があるのではないかとも思っています。白色度70の原料に使う新聞古紙は、白色度が50程度です。これにわざわざ手をかけて70まで白くする必要があるのでしょうか。それにかけるコストは無駄ですし、環境にもやさしいとは言えないと思います。70にするかどうかを決めるのは、メーカーやサプライヤーではなく、マーケットだと思います。

半谷 「白色度60の再生紙をつくると、逆にコストアップになる」。白色度60の再生紙が市場にほとんど出回らなくなった5年ほど前の複数の製紙メーカー技術者の言です。私たちは、60に関しては復活の実現性がないと判断しました。一方、マーケットでは白色度80が主流の座を固めようとしていた。そのままマーケットに任せておけば、矢澤さんのご心配はますます悪化してしまう。結局、白色度70が、メーカーサイド、ひいてはユーザーサイドにとって、経済性と環境性を調和させる現実的なポイントだと思うのです。
 そこで私たちは、より安い価格で環境によりいいものが買えるのであれば、必ずしも啓蒙活動に頼らなくても、リサイクル型の商品がマーケットメカニズムで定着していくのではないか。そういう仮説を5年前に立てて白色度70の運動を始めたわけです。
 しかし、初めからマーケット任せにしてしまったら、まず環境やリサイクル型の社会は来ない。例えば、スーパーに行ったら、天然パルプだろうが再生紙だろうが関係なく、目玉商品の安いトイレットペーパーを買ってしまうのが現実のマーケットなのです。再生紙のマーケットを刺激するボランティア活動が白色度70の運動です。

三橋  白色度70の再生紙を使っていく場合に、マーケットメカニズムにどう向き合っていけばいいのでしょう。マーケットが求めるものがいいと考えるのか、マーケットを変えていくことが必要なのか。

野本  1990年代初め、再生コピー用紙市場が拡大しない最大の課題はコストでした。値段が高くて買っていただけない。まだ生産量がとても少ない時代でしたから、技術面を確立したメーカーが少なかったこともあります。
 10年近くたって、大企業や官公庁は、リサイクル用紙を採用する状況になりつつありますが、残念ながら、比較的小規模の企業では普及が進んでいません。
 今コピー用紙はさまざまなチャンネルで売られています。家電量販店やホームセンターなどでは、相当に安い値段で売られています。通販もそうです。ここでは、目玉商品としてコピー用紙が売られます。いずれの場合も安くなるのは、輸入紙も含めて天然パルプ紙が中心です。お客さまがどちらを選ぶか。今の段階では、残念ながら天然パルプ紙をお買い上げになるケースが多い。これが民間企業に普及が進まない原因ではないかと、私どもはとらえています。
 幸いなことに、今では各メーカーさんとも、古紙パルプの設備をどんどんつくり始めているので、結果的には、再生紙の価格はこなれていくでしょう。ほぼ同じ価格で品質にも差がなければ、再生紙の普及率が上がっていくのではないかと思います。

中森  再生紙の方が高いということが、過去にはありました。しかし、今では私どもコクヨが販売する時点では、再生紙も天然パルプ紙も同価格になってきています。加えて、コピー用紙全体の販売量に占める再生紙の割合は、この2年間で上がっています。特に古紙配合率100%、白色度70%のものが2・5倍増になっています。間違いなく白色度70は、普及していくと考えています。
 ただ、普及にあたって阻害要因がひとつあります。ゼロックスさんと王子製紙さんが「共用紙」という紙を開発しました。これは、コピー機にもワープロ用紙にもレーザープリンターにもインクジェットプリンターにも使えるという、使い勝手のいい紙で、ユーザーさんからの要望が強いのです。その「共用紙」を、古紙配合率100%、白色度70%でつくるのが難しい。インクジェット適性という技術的な課題があるためです。
 メーカーがこれをクリアーできれば、劇的に古紙100%、白色度70%のものが広がると考えています。

三橋  メーカーは、消費者やサプライヤーが求めているから提供するのだと、おっしゃいます。私はジャーナリストなので辛口のいい方をしますが、製紙メーカーの製品をつくるにあたっての哲学とはなんでしょう。単に、サプライヤーが、消費者が、といって逃げているような気がするんですが。

津島  製紙会社というのは、たくさんの木を原料に使いますので、環境保護の視点でいろいろ言われます。王子製紙では「環境行動計画21世紀」と称して、海外植林事業計画をすすめており、現在約7万ヘクタールの植林をしています。そして、2010年までに約20万ヘクタールの植林をする計画です。森林というのは二酸化炭素を吸収してくれるわけです。若い木ほどたくさん吸収するので、大きくなった木から伐採して材料に使っています。
 古紙の利用促進も、当然避けて通れないものだと思います。
 白色度70%の紙の製造工程を簡単に説明すると、まず新聞古紙を薬品で溶かし、インクをとり除きます。出てきた紙は白色度60%とか50%くらいです。そして、70%の白色度にするために薬品を使い、チリなどを取っていきます。古紙パルプの場合は、だいたい1トンの新聞古紙から0・7トンのパルプができます。残りの0・3トンは廃棄物です。ダンボールをつくる設備が近くにあると、それを中芯に入れたりして有効活用ができます。ダンボールの設備がない場合は、廃棄物を燃やして小さく軽くして処分するまでの費用がかかることになります。
 製造費は、古紙パルプが1キログラムあたり30円とすると、天然パルプが35円くらいになります。比例レベルではそういう計算になるのですが、やはり脱墨設備の導入費や廃棄物の処理費用を考えていくと、古紙をいかに安定して安く手に入れるかが、大きな課題になってきます。
半谷  そういう課題を解決する上でも、回収量が限られていて割高な上質の古紙を原料とする白色度80よりも、ダブつきが懸念されるほど量のある新聞や雑誌の古紙を利用する白色度70の方が理にかなっていると思うのですが…。

時代の流れは変わりつつある

岡本  私は、メーカーや消費者が努力すべきという前に、日本の社会構造の根幹にまで踏み込んで考えないといけないと思います。
 日本の消費構造を諸外国と比べてみます。家の例ですが、アメリカでは、家は建ててから100年使えます。イギリスでは141年、ヨーロッパでは200年ぐらいです。でも、日本では30年ぐらいしか使えません。
 私たちは熱帯雨林を切って家を建ててきました。熱帯雨林の生態系が元通りになるのには200年かかる。その熱帯林の木を伐採して建てた家を、私たちは30年しか使いません。これでは資源収支が合いません。だからフィリピンの森はなくなりました。インドネシアやマレーシアの森もなくなってきて、今私たちはカナダや北米、ロシアからどんどん木を買おうとしています。日本人が資源を食い尽くす、森林を食い尽くすという構造がここにあるわけです。
 ショートライフの社会構造をいかにロングライフにするかということまで考えないと、リサイクル社会が定着するのは非常に難しいのではないかと思います。

中島  ごみを出さない運動が市民の中では始まっています。スーパーで買い物をすると、買った肉、果物、その他を自分の袋に入れ替え、トレーなどは返します。そんなばかなという方がいるかもしれませんが、実際にそういう動きに変わってきている。資源を大切にするという意識改革が進んでいます。

田守  時代というのは、損得を中心に考える利益追求型から社会正義追求型に変わりつつあって、企業にそういったコンセプトがなければ、消費者から露骨にボイコットされるようになってきています。
 白色度70がない製紙メーカーやサプライヤーは、恐らく存続が危ないでしょう。時代の流れは確実にそうなってきています。

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